幼児の遊びにおもちゃは必要?
【おもちゃの無い場所でも広がる遊びの世界 】
子どもにとって遊びとは、生活の中心であり、学びであると言えます。
子どもの遊びと聞くと、子育て家庭で真っ先に浮かぶのはやはりおもちゃを使った遊びが多いと思いますが、子どもたちにとっての”遊び”はおもちゃのない場所でもどんどん広がっていきます。
今回はそんなおもちゃを使わない幼児の遊びについて考えてみたいと思います。
幼児の遊びを無限に広げる”森の幼稚園”とは
おもちゃを使わない遊びの世界を考える際にとても参考になるのが、主にヨーロッパで多く開設されている”森の幼稚園”と呼ばれる施設です。
最近では日本でも少しずつ見られるようになりましたが、なかなか手軽に通える場所にはない為、知らない方も多いかと思います。まず、そんな森の幼稚園について簡単に説明します。
森の幼稚園とは、その名の通り森にある幼稚園です。
特徴的なのは基本的に園舎を持たない事で、あるとしても森の中にトレーラーのような事務所があるだけのところがほとんどです。
保育室がないので、もちろんおもちゃも机や椅子もありません。普通の幼稚園に比べると教師や園児の数も少なく、大体が年齢ごとではなく異年齢の幼児が一緒に過ごす縦割り保育を行っており、保育時間中は天候など関係なく、森の中で1日過ごします。
そんな森の幼稚園で、子どもたちはどのような遊びを展開し、学びにつなげているのか想像出来ますか?おもちゃのない森の中でも子どもたちは自ら遊びを見つけ、展開していきます。
幼児は遊びを見つける天才
それでは、実際に森の幼稚園では毎日どんな保育が行われているのでしょうか。森の中での生活は、とにかく子どもの自主性を大切にして行われています。
子どもたちにとっての森の中は興味のあるものであふれ、そのどれもが遊びにつながっているからです。
実はそれは森の中でなくても、例えば子どもと公園に行った時、虫や草花、空の雲の形や鳥の鳴き声など、大人が当たり前に素通りする事で子どもが止まって五感をフル活用させてる場面に遭遇した事はありませんか?
これはなんの音だろう→真似してみようかな、虫はなんで飛んでるんだろう→捕まえたいな、このお花は何色だろう→同じ色の物あるかな、あの雲は何に見える?→みんなは何に見えてるのかな?もしかして雨が降るのかな?と、
公園を歩くだけでも子どもたちの頭はたくさんの好奇心と疑問でいっぱいで、子どもはそこから色々な遊びを考える天才なのです。
森の中での遊びが幼児の学びになる
【遊びで育てる問題解決力】
しかし、自然の中で興味関心から遊びを展開していく為には、たくさんの問題が出てきます。
色々な道具が揃っている幼稚園と違って森の幼稚園は使える物が限られている為、子どもたちは”やりたい事をどうやって実現するか”を考えなければなりません。
経験の多い年長児を中心に自分の思いを伝え、考えを共有し、結論を見つける、大人でもなかなか難しい事かもしれません。
しかしこれは、一般的な幼稚園の遊びの中でも経験し身につけて欲しい力の1つであり、保育の根本の目的はほとんど変わりません。
それでも、保育者が提供した遊びや便利な物が多い保育室で行われる遊びで起こる問題に比べ、森の中で子どもたちが直面する問題ははるかに難易度が高いと思われます。
それでも、子どもたち自らが興味関心を持って取り組んだ課題であるからこそ問題解決に向かう熱意も比例して高くなり、大きな学びへとつながるのでしょう。
【見守る保育の大切さ】
最後に、子どもと遊びについて考える中で難しいのが、危険な事をどこまで見守るかという問題です。ジャングルジムのてっぺんに初めて登る子どもを見る時、心配で手を出したくなりますよね。
もちろん大きな怪我にならないよう大人は子どもを注意してみていなければなりません。でも、少しの怪我や失敗でさえも先回りして回避しがちなのが大人です。
子どもたちは目の前のキラキラした世界に夢中で遊んでいる為、この先何が起こるのか見通しが立たない事が多いです。
それでも、やってみたらこうなった、これは失敗だった、という経験から、どうすれば良かったのか考え、次はこうしよう、と学ぶ事が大事なのです。
森の幼稚園ではこうした見守る事を大切にし、どんな事でもまずはやってみる事を促します。ジャングルジムで言えば、上りたいと思ったのならまずは上らせてみます。
上っている過程で、子どもがしっかり棒を握れているのか、周りにぶつかりそうな子はいないか、危険な上り方をしていないか、最後まで上れるかしっかり見極めて、本当に危険であれば止める事が大切です。
その際に何がいけなかったのか、どうすれば上まで上れるのか子どもと考えられると良いですね。遊びから学ぶのは、楽しい事ばかりではありません。